ザンッ

「千景くん!」

 モヤが素早い動きで、空中をグルリと回った。
 すると目に広がる、ビックリする光景。

「木や花が、枯れてる……?」

 動くモヤを中心に、木々や草や花――全てが枯れ始める。
 みずみずしい緑は、一気に姿を消した。

「こんな事って……!」

 その時。
 わたしは、千景くんがさっき話した事を思い出した。

 ――ここからは情も情けも通じない奴だ

 生きている物を、一瞬にして滅ぼしてしまう大妖怪。
 確かに、この妖怪を相手に、話をするのは無理だ。
 っていうか、怖くて出来ない!

「でも、さっき妖怪は“見つけた”って言ってた。
 それは、誰のことなの?」

 チラリと妖怪を見る。
 すると妖怪は、だんだんと形を成していき――モヤから、大きなネコへと姿を変える。
 そのネコは、なんとなんと。

 ジーっと、ネコ千景くんを見ていた。

 空へ飛ばされたキキが、いつの間にか戻って来る。
 そして妖怪から熱い視線を受けている千景くんのとなりに立った。