「行かないよ。千景くんを、このまま放っておけないもん!
 どうやったら人間に戻るか、いろいろ試してみよう!」
「例えば?」
「え? えっと……」

 期待にかがやく千景くんの目。
 だけど、次のわたしの一言で、

「例えば、バナナを食べる……とか?」
「……」

 目のかがやきはすぐに消え、代わりに浮かぶ「諦め」の文字。
「はぁ~~~~」と千景くんはため息をついた後。
 残ったバナナを、ゆっくりと食べ始めた。

 そして。

 ネコ千景くんが、バナナを完食した後。
 わたしと千景くんは、校舎の裏で作戦会議をしていた。

「いつも、どうやったら人間に戻るの?」
「わからねぇ。体がムズムズしてきたら、人間に戻る合図だ。
 そういう時は、いつも何かに隠れてコッソリ人間に戻ってる」
「そ、そうなんだ……」

 千景くん、大変なんだね……。

 妖怪の呪いにかかる――
 それがどういう事なのか、改めて知る。