千景くんをかかえる。
 すると聞こえたのは……

 ぐぅぅぅぅ

 なんとも立派な、お腹の音。

「もう無理。腹へった……」
「あらら……」

 どうやら、ネコ千景くん。
 昨日から一度も人間に戻れず、飲まず食わずで過ごしていたみたいです。

 五分後――

「バナナ、うめぇ!」
「……えっと。そろそろ、何があったか聞いてもいいかな?」

 わたしが家から持って来た生ぬるいバナナを、目の前で、一心不乱に食べている黒猫――もとい、ネコ化した野良千景くん。

「まさか昨日から、ずっとネコのまま?」
「そーだよ。戻らねんだよ、人間に」
「やっぱり……!」

 昨日のイヤな予想、的中!
 すると間の悪いことに、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。
 どうやら一時間目が始まるみたい。

「行けよ、俺のことはイイから」
「千景くん……」

 ネコの姿のまま、強がりを言う千景くん。
 プイと、そっぽを向いた後ろ姿。
 そんなの……放っておけるわけないよ。