「君は鳴かないんだね」
「……」
「いつか絶対、また会おうね。
 その時、元気な声を聞かせてね!」

 仔猫にあいさつをしていると、肩に乗ったキキが急かす。

「早く帰らないと、主が風邪をひいてしまいますよ!」
「わー、急ごう!」

 そして、わたしとキキは、濡れながら家に帰る。
 すぐに温かいお風呂に入って、風邪も引かなかった。

 だけど、問題はまだあって……。

「え、千景くん。今日、休み?」

 驚くことに、次の日の学校にも、千景くんは姿を見せなかった。
 昨日、ネコ化して別れて以来、一度も会っていない。
 これは、もしかして……

「千景くんに、何かあったんだ……!」

 そう思うと、いても立ってもいられない。
 授業が始まる時間だったけど……ひっそりと教室を抜け出した。

 その際――
 家からこっそり持ってきたバナナを、カバンからスカートのポケットの中に、移動させる。

 その様子を見ていたキキ。
「なんでバナナが……」と、不思議なものを見る目で、ポケットに入ったバナナを見つめた。