「むしろわたし、千景くんにきらわれてる自信がある!」

 さっきのキキよろしく――今度は、わたしがビシッと言い張った。
 だけどキキは、フッと顔に影を落とす。
 そして小さい声で「それは、どうですかな」と呟いた。

「ん? なんか言った?」
「いえ、何でもありません。
 さぁ、主。家へ急ぎましょう。雨が降りそうです」

 見上げると、空にくらーい曇が集まっている。
 キキの言う通り、きっと雨はすぐそこだ。

「そうだね、急ごう!」

 だけど足に力を入れた、その時だった。

 ヒョコッ

「え! わぁ!?」

 草むらから、何かが飛び出してきた!

 避けようとしたわたしは、華麗なジャンプ――とは、いかず。
 体に急ブレーキをかけたせいで、激しくこけてしまう。

 ズシャッ

「い、いてて……」
「主! 大丈夫ですか!?」

 わたしがこける直前に、肩から逃げていたキキ。
 わたしと違って反射神経がいいようで、うらやましい!