「千景くん、どこに行っちゃったんだろう?」
まさか、ずっとネコのまま戻らなかったとか?――なんて、イヤな予想が生まれる。
だけど、いつものように肩に乗ったキキは、あっけらかんと答えた。
「授業とやらが面倒だっただけでは?」
「う~ん、それはないと思うよ。
千景くんって教室では王子様だから、真面目な性格で通ってるし。
無断欠席はめずらしいって、先生も言ってた」
するとキキは気に食わなかったのか、フンと鼻を鳴らした。
この二人、いつになったら仲良くなるんだろう……。
「キキは、千景くんの事がキライなの?」
「嫌いですな」
ズバリと、キキは言い切った。
千景くんに同じ質問をしたら、同じ答えが返ってくるんだろうなぁ。
「アイツは、隙あらば僕を祓おうとする。
きっと主を独り占めしたいんですよ。卑怯な奴!」
「いや、違うと思うよ……」
キキが「妖怪」だから、千景くんは祓おうとしてるのであって。
決して「わたしと二人きりになりたい」からではない。