千景くんは、ネコになった自分の手を見る。

「その日から……俺は妖怪が大嫌いになった。
 妖怪と名のつくものは、すべて敵。祓う対象なんだよ」
「千景くん……」

 その時、わたしはおずおずと手を挙げる。

「あの、すごく今更なんだけど。
 妖怪にかけられた呪いって、まさか……」
「……」

 ブスリとはぶてた、ネコ千景くん。
 その顔に「わざわざ言わせるのか?」と書いてある。

 いや、わたしも何となく「何の呪い」かは分かるけど……。
 一応、ハッキリさせておかないと、ね?

 すると、ネコ千景くんは後ろを向く。
 そして一時間目が始まるチャイムを聞きながら、ポツリとつぶやいた。

「俺は〝とある条件のもと〟ネコに変化する呪いをかけられた。
 その呪いをかけた妖怪。
 その名前は――猫又だ」

 ◇

 その後。
 千景くんは一日、教室に戻らなかった。

「大丈夫かな、千景くん……」

 現在、下校中。
 わたしはキキと一緒に、家までの道のりを、ゆっくりのんびり歩いていた。