「アハハ! やっぱこわがりちゃんだな!」
「ふふ、そんなに怖いものがあったら大変だね。こわがりちゃん」
「ね、ねぇ~。本当だよ~」

 言い返したい、ものすごく……。
 だけど、出来ない。

 なぜなら――

 ここでハンコ―すると、自分がいじめられるんじゃないかって。
 そんな不安があるから、何も言い返せない。

 何でも怖がりな小羽花りんは、いじめだって怖いのだ。

「じゃ、じゃあ野良千景くん。そういうことで……」

 イイ感じに、この場から逃げれるかも!というタイミングを見計らって、わたしは後ずさりをする。
 だけど――

 ガシッ

「ん?」

 見ると、野良千景くんが、わたしの腕をガッシリと握っていた。
 しかも、そのままズルズル引っ張て、二人して教室の外に出てしまう。

 え!? どゆこと!?

「の、野良千景くん! もう授業が始まっちゃうよ……!?」
「わぁ、ホントーだ。ドウシヨウ」

 めっちゃ棒読み!
 わけがわからなくて、野良千景くんを見る。
 すると、野良千景くんは少しだけコッチを振り返って――

「顔が赤いのが気になるから、やっぱり保健室に行こう」
「!」

 そんな優しいことを、言ってくれるのでした。