「小羽が妖気を感じないなら、気のせいか」
「え?〝気づいてません〟って、声に出てた?」
「そのポカン顔を見りゃ、だいたい分かるっての。時間とって悪かったな」

 手をヒラリとさせ、わたしを置いて、一人で去っていく千景くん。
 あっさりと話を終わらせた千景くんだけど……寄せたまゆは、元に戻ってない。スゴイしかめっ面だ。

「ち、千景くん!」

 呼ぶと、少し先にいる千景くんがふり返る。

「あのさ……大丈夫? いつもより元気がないよ?」
「え」

 千景くんは、少しだけ目を開いた。
 まるで「なんで分かった?」って、おどろいたみたいに。

「わたし頼りないけど、もし千景くんが困ってるなら相談に乗りたい!
 さっきは、その……うれしかったし。ありがとう」

 ――もしかして友達になったの?
 ――そうだよ、わたし達、友達になったんだぁ!

 あの静ちゃんの言葉が、例えその場だけの勢いだとしても。
 わたしのことを「友達」って言ってくれて、うれしかったの。

「だから千景くんも、わたしになんでも話してね!」
「小羽……」