「ぜひ! ぜひだよ、千景くん!」
「よかった。これからよろしくね、休田さん。
 小羽さんも――ね?」
「は、はひ……」

 魔王様のオーラを出す彼に「イヤです」とは言えず……。
 わたしは、力なくうなずくしかなかった。

 すると千景くんは「さっそくなんだけど」と、わたしに振り返る。

「係のことで話があるんだ。小羽さん、ちょっといい?」
「え……、イヤで、」

 拒否しようとした時。
 魔王サマ千景くんは、皆には見えないように手を【滅】の構えにする。
 そしてわたしの耳元で、こうささやいた。

「コッチの事で話があんだよ」
「コッチ、というのは、」

「決まってんだろ――妖怪の事だ」
「……」

【滅】の構え、イコール、「妖怪」のこと。
 わたしの知らない間に、ヒミツの合図ができていた。

 ◇
 
「で、コッチの話って何でしょう?」

 わたしも【滅】の構えをする。
 すると、すごい勢いで千景くんににらまれた。
 おぉ、怖いこわい!

「最近、学校に〝変な気〟が混じってないか?」
「変な気?」

「ずっと妖怪に見られてる、みたいな」
「う、う~ん?」

 深刻な顔をしている千景くん。

 だけど……ごめんなさい。
 わたし、全然きづいてません。