「おはよう、花りんちゃん!」
「休田静ちゃん、おはよう」

 朝、登校して教室に入る。
 すると休田静ちゃんが、あいさつをしてくれた。

 休田静ちゃん。
 カラスの妖怪――カーくんを助けた心優しい女の子。

「今日の宿題やってきた? むずかしかったよね~」
「休田静ちゃんも、そう思った? わたしも同じことを……」

「……」
「えっと、あの……?」

 休田静ちゃんは、わたしを見て何も言わなくなった。

 あれ?
 わたし……何か言っちゃったかな!?

 だけど心配するわたしをよそに、休田静ちゃんは「ぷは!」と、可愛い笑顔を浮かべる。

「花りんちゃん、なんでわたしの事をフルネームで呼ぶの? 聞いてたら、もう可笑しくて!」
「え、あ……ごめんね。クセで」

 ぺこりと頭を下げる。
 すると休田静ちゃんは髪が乱れることを気にせず、思い切り首を振った。

「ちがうの、怒ってるんじゃないんだよ? 花りんちゃんさえ良ければなんだけど、静って呼んでほしいの!」
「静、ちゃん……?」
「そう!」

 休田静ちゃん、じゃなくて。
 静ちゃん――

 声に出すと、一気に距離が縮まった気がする。
 はずかしくなって、ポポポと顔が赤くなった。