「野良~、小羽はお前のこと怖がってんじゃね?」
「そーそー。”こわがり”だもんね~」

「え? こわがり?」
「ッ!」

 まただ。
 また、クラスの人にからかわれた。
 優しくて「王子様」って呼ばれてる野良千景くんを「怖い」なんて……。
 そんなこと、思うはずがないのに。

「ゴメン小羽さん、俺のせいだったんだね」
「え、あの……」

 申し訳なさそうな顔を浮かべる、野良千景くん。
「ちがうよ!」って言いたかったけど、またクラスの人が口をはさむ。

「そうだ、”こわがりちゃーん”。
 こわがりちゃんが、一番怖いものを教えてよー」
「え……」

 一番、怖いもの――?

 両手をギュッとにぎる。
 わたしにとって一番怖いもの、なんて。
 そんなもの、決まってる。
 
 それは――
 平気な顔でわたしのことを好き勝手に言う、あなた達クラスメイトだよ。

「え、えへへ~。なんだろう? ありすぎて分からないや」

 だけど、わたしはヘイワ主義しゃだから!
 クラスに波風たてないように、笑ってごまかした。