「ありがとう、千景くん」
「なにか言ったか?」
「ううん、何も!」

 そして、ちょうどお風呂が終わった時。
 今まで気絶していた休田静ちゃんが「うぅ」と、目を開ける。

「あれ? 私、どうしてココに……?」
「良かった、目が覚めたんだね」

 ホッと、一安心。
 あ、でも千景くんが魔王サマのままだ!
 早く元の王子様に戻らないと!

 すると手を洗った千景くんが、バサリ――かれいにハンカチを取り出して、こちらへやってきた。

「休田さん、もう大丈夫かな?」
「へ!? 千景くん!?」

「……」

 王子様の切り替えの早さに、唖然とする。
 いつものマガマガしいオーラは、一体どこへ!?

「顔色が悪かったから、外の風に当たった方がいいだろうと思ってね。今まで外にいたんだよ。
 あ、まだ調子悪いなら保健室に行ってね。
 そこにいる小羽さんが、きっと付き添ってくれるから」
「!?」

 き、聞いてない!
 聞いてないよ、千景くん!