「……っ」

 なんか、泣きそう。
 キキもカラスさんも「人間のわたしと一緒にいたい」って。
 そう思ってくれるんだね?

「ズビ、ズビ……」
「泣くなよ、きたねぇなぁ。
 あ、ついでにお前も”掃除”しとくか?」
「エンリョしときます……!」

 すると千景くんは、またフッと笑った。
 そして「俺はキレイ好きなんだよ」と、誰得情報をおひろめする。

「タヌキと一緒で、これからカラスがお前のそばにいるなら、カラスだろうが妖怪だろうがキレイにしないとな」
「あ、それで“お風呂”って言ってたの?」
「そーだよ。……悪いかよ」

 千景くんは、少しだけ顔を赤く染める。
「ありがとう」とお礼を言うと、ますます赤く染まった。

 そこへボディーソープに興味を持ったキキが千景くんに近寄る。

「おい小童、なぜ僕には掃除をしない?」
「あ? 石けんがもったいねーだろうが」

「明らかに差別だ! 僕も洗え!」
「うるせぇなぁ、誰が洗うか!」

「……ふふ」

 千景くんは、カラスくんを祓わなかった。
 妖怪の事を嫌っているのに、見逃してくれた。

 その気持ちが、すごく嬉しい。