「で、これから、お前はどうしたいんだ。カラス。
 お礼をしたって事は、祓っていいんだよな?
 どんな理由があるにしろ、妖怪は人間に害なす存在だ。
 見過ごすわけにはいかない」
「ま、待ってよ! 千景くん!」

 だけど私を止めたのは――カラスさん本人だった。

『いいんです。その男の子の言う通りだ。
 妖怪は、この世に居てはならない。
 どんな理由であろうともね。
 それに――
 その男の子は、妖怪に呪いをかけられて、苦労しているみたいだ。
 私を嫌うのも無理ない話です』
「え……?」

 千景くんを見ると、千景くんは奥歯をギリッと噛んだ。
 悔しい、憎いって……顔に書いてある。

 そうか、千景くんからしたら――
 自分に呪いをかけた妖怪という存在を全て憎むのは、当たり前なんだ。

「じゃあエンリョなく祓うからな」
『お願します』

 千景くんは、カラスさんを祓う準備をした。

「だ、だからダメだって!!
 千景くん、なんでもかんでもイサギよく祓いすぎ!」

 手を伸ばして、千景くんを止めようとする。

 だけど……んん?
 千景くんの手が【滅】の構えをしていない。

「っていうか、あれ……!」

 千景くんの手にあるのは石けん。
 しかもボディーソープ!?