『嬉しかった……。
 こんな私に優しくしてくれる人間がいる――その事がうれしかったのです』
「カラスさん、人間に怒ってないの?」
『怒っていません。
 あの子の優しさに触れたおかげで、私は悔いなく死ぬ事が出来た』

 だから――と、カラスさんはバサリと羽ばたく。

 羽が焦げていても、飛ぶことは出来るみたい。
 キレイな飛行で、まだ気絶している休田静ちゃんの隣へ降り立った。

『だから私は、妖怪になった。
 どうしても、この子にお礼が言いたくて。
 この子にお礼を言うまでは、この世から消えてなるものかと。
 そんな事を思っていたら、妖怪になっていました。
 だけど、私の願いは叶った』
「え?」
『さっきは、大きな声を出してすみません。
 この子に、私なりの精一杯のお礼を言ったのです』

 ――カあぁぁぁぁぁ!!

 あぁ、さっきの!
 そっか、アレはお礼だったんだ。

「ちゃんと言えたんだね、よかった」

 すると、わたしの後ろから、千景くんがカラスさんに尋ねる。