「おいカラス、今から俺の質問に答えろ。
 妖怪がかけた呪いを解く方法、お前は何か知っているか?」
『……』

 すると、カラスの妖怪は、静かに首を振った。
 それを見届けた千景くんは「そうか」と、手に力を込める。

「教えてくれて助かった。
 安らかに消え失せろ――【滅】!!」

 力強く、千景くんが唱えた時。
 カラスの妖怪は――いっさいの抵抗なく、目を閉じた。
 まるで、自分が消されるのを、受け入れてるかのように。

「……ダメ」

 やっぱり、このカラスは他の妖怪とは違うよ!

「やめて、千景くん!」
「――っ」

 手を構えたまま【滅】の力を放出する千景くん。
 カラスは「滅」を受け、赤い炎に包まれた。

 あのカラスは、このまま炎に焼かれて、消えちゃうのかな?
 そんなの……ダメだよ!

 千景くんの祓いをやめさせようと、わたしは彼の正面に回る。
 そして両腕を広げ、千景くんの体を抱きしめた。

 ギュッ

「おわ!? お前、何してんだよ!」
「千景くん。お願いだから、やめて!」
「だからって、くっつくな!」

 千景くんは、体をねじって、わたしを振り落とそうとした。

 だけど、諦めない!
 わたしは絶対、この手を離さないからね!