「こんの、妖怪タヌキが」
「ふん。小童ニンゲンが」
 
 バチバチ――と。
 二人の間に、火花が見える。

 ちょっとちょっと、二人とも!

「今は、いがみ合ってる場合じゃないと思うんだけど!」

 仲裁するよう、二人の間に入る。
 すると二人は「ギギギ……」といがみ合った後、フンッと。
 同じタイミングで、反対方向を向いた。

 はぁ……、やっとカラスの事に集中できる。
 っていうか。
 ここまでカラスが攻撃してこなかったの、キセキじゃない?
 ふつうだったら、すでに攻撃してるよね?

 しずかにこちらを見るカラスに、おずおずと尋ねる。

「もしかして、待っててくれた?」
『……(コクン)』

 え、本当に!?
 待っててくれたの!?
 そんな優しい妖怪いるの!?

「あ、ありがとう」
『……(コクン)』

 ちゃんと返事をしてくれるし、攻撃してくる様子はない。
 キキみたいに、人間に対して恨みを抱いてるわけじゃないのかも?