「どうしてです?」

「小羽花りんに助けられた休田静ちゃん」って、皆がからかわない?
 わたしのせいで、休田静ちゃんを傷つけたりしないかな。
 もし、わたしのせいで休田静ちゃんが泣くことがあったら……

 ――こわがりのくせに、余計なことをしないでよ!

「……っ!」

 ドクンと、体が大きく波打った。
 ただの想像なのに、体の内側で、いたいくらい心臓が反応している。

「主、大丈夫ですか?」
「……うん」

 大丈夫――そう返事をした時。
 教室の中が、さわがしくなる。

「キャー!」
「千景くんに、お姫さま抱っこしてもらえるなんてー!」
「静ちゃん、いいなぁ~!」

 へ?
 お姫さま抱っこ!?

 見ると、今も白目をむいた休田静ちゃんを、確かに千景くんがお姫様抱っこをしていた。
 す、すごい力持ち!

「体調悪いみたいだから、保健室に運んでくるね」

 そう言った千景くんは、クラスの輪を抜け、教室を後にした。
 わたしの目の前を通る時、意味ありげに、こちらを見ながら――