「ねぇキキ。もしかして……」
「あの女、カラスの姿は視えてないでしょうが声は聞こえていますね。
 だから、あんなに怯えているんでしょう」
「だよねぇ……」

 すると、その時。
 けたたましく、カラスが鳴いた。

『カあぁぁぁぁぁ!!』

 思わず耳をふさぎたくなるような――鼓膜が揺れるほどの、つんざく声。
 ビリビリと、空気がふるえた。
 その証拠に、窓がカタカタと小刻みに音を立てている。

「び、ビックリした……。
 って、休田静ちゃん!?」

 見ると、休田静ちゃんは、力なく机に伏せている。
 こっちに向いた彼女の顔を見ると――立派な白目。
 あのカラスの声に、恐怖で気を失ったんだ!

「ど、どどど、どうしよう! 助けないと……!」
「さあ主、出番ですね!
 いつものようにご活躍してください!」

 どこから出したか分からない扇子を持ち、肩の上で踊るキキ。

 そりゃ、わたしだって、休田静ちゃんを助けたいよ。
 だけど……!

「わたしが行ったら、迷惑になるんじゃないかな……」