ただのカラスだったら、あんなに見ないよね?
まさか「カラスが大好き」ってわけじゃないだろうし。
ということは……。
やっぱり、千景くんも気づいているんだ。
あのカラスが妖怪だって。
「そういえばキキ、言ってたよね?」
――狙われているのは、人間ですぞ
「あのカラスは、人間をおそうつもりなの?」
すると、キキはうなずいた。
ということは――あのカラスは今、どの人間をおそうか「物色中」ってこと!?
「選ばれたくないなぁ……」
「心配しないでください。
今回、主が狙われる事はないでしょうから」
「どういうこと?」
「あのカラスを見てください。
さっきから一人の人間ばかりを見ています」
「え……!?」
見ると、確かにカラスは一点しか見ていない。
その視線の先にいるのは……
「休田(やすみだ)静(しずか)ちゃん!」
休田静ちゃんは、席にポツンと座っていた。
そして……茶色のボブの頭を抱えて、ブルブルふるえている。
ときどき見える横顔は、真っ青だ。