あぁ、どんどん人間離れして、立派な魔王様の顔に……!
「実はアイツ妖怪ですか?」とわたしに聞くキキの声が、震えてる。
 うん、気持ちは分かるよ。すごく。

 だけど千景くんは、怒りで込めた力を全身でゆるめた。
 そして「アホらし」と。
 もはや彼の口グセになった言葉を、ポツリと呟く。

「友達ごっこでも、ペットごっこでも、主従ごっこでも……好きにやれ。
 ただし、俺を巻き込むな。
 俺は――

 好きで祓ってるわけでも、好きでネコになってるわけでもないんだ」
「え……」

 それだけ言うと、千景くんは教室から出て行ってしまった。
 後ろ姿がさみしそうに見えたのは……気のせい?

「どうしちゃったんだろうね、千景くん」
「主、気になるんですか?」

 わたしの肩に乗り、顔を覗き込むキキ。
 だけど、その時。

「カー!」

 一匹のカラスが、窓のむこうで横一直線に飛ぶ姿が見える。
 窓を開けて目で追うと、カラスはピタリと木の枝に止まり、ジッと何かを観察していた。
 視線の先は、確か……。

「わたしたちの教室だ!」