だけど王子様バージョンの千景くんにかかれば、こんなピンチは、お茶の子さいさいなようで。
 スッとわたしの前に立ち、みんなの視界からわたしを隠す。

「なんでもないよ。係の用があって職員室に行くだけだから」
「そうなんだ、大変だな」
「早く帰ってきてね~」

「……いま」

 気のせい、かもしれないけど。
 千景くん……。

 皆から、わたしを庇ってくれたのかな?

 ◇

 移動先は、人気のない教室。
 わたしは正座、千景くんは仁王立ち――という恐ろしい図で、お話は始まった。

「で、お前は今、どういう状況なんだよ」
「ど、どういう……と、言いますと?」

「お前の肩にのってる妖怪。そいつ、昨日のタヌキだろ?
 なんで一緒にいるんだよ」
「へへ、バレちゃった?」

 ポリポリと頭をかくと、千景くんがギロッと睨んで来た。
 ヒー! 迫力ありすぎるよ!
 あまりのおそろしさに、妖怪のキキでさえ体を震わせる。