怯えるわたしに、千景くんは再び顔を近づける。
 そして笑顔のまま、さらに声を小さくした。

「クラスの奴らが怪しむから、早く行くぞ。ついてこい」
「キキを祓わないって約束してくれたら、ついていく……!」

 わたしの言葉に、キキは「主……!」と泣きそうになっていた。
 それを見た千景くんが「はぁ」とため息をつく。

「約束する。だから早く来い。いいな?」
「……う、うん」

 意外。約束してくれるんだ。
 てっきり「何がなんでも祓う」って言うかと思ったのに。

「ありがとう、千景くん」
「ふん」

 千景くんを、ちょっぴり見直した。
 昨日も思ったけど、やっぱり千景くんは、怖いけど優しい人だ。

 ガタッと椅子を引き、移動するため席をはなれる。
 だけど……

「おい千景~。こわがりちゃんと何を話すんだよ?」
「私たちも、ついていこうか?」
「千景は昨日、こわがりちゃんに怖がられたんだろ?
 二人きりで話してたら、またこわがってピーピー泣くんじゃね?」

「……」
「……」

 あの、千景くん。
 もう充分、みんなに怪しまれてます……。