次の日。
 教室には、すでに千景くんが登校していた。

 昨日、別れ際にネコ化した千景くん。
 あれから姿が見えなかったけど、無事に人間に戻れたらしい。
 今朝は制服を着て、何事もなく席に座っていた。
 王子様のような、やわらかい表情を顔にはりつけて。

「おはよー、千景くん」
「おはよう」

 クラスの皆が、千景くんにあいさつしてる。
 しかも、あんなにニコニコと。

 あれ、おかしいな。
 わたしには、王子様の着ぐるみを被った魔王にしか見えないよ?

「にしても、千景くん。
 皆の前で、どうして王子様のフリをしてるんだろう……」

 千景くんについて、また一つ、ナゾが増えた。

 まぁでも、わたしには関係ないか。
 スルー、スルー♪

 そう思っていた時だった。

 ガシッ

「小羽さん。少し話があるんだけど、いいかな?」
「はう!?」

 千景くん!?

 教室だから王子様バージョンでいるのかもしれないけど、逆に怖いよ!
 ナゾの迫力が、笑顔にこもってる!
 怖すぎますって!

「よ、用があるなら、こここ、ここで……」
「……」

 すると千景くんは、ニコニコ笑いながら――皆に見えないように、ピッと二本の指を立てる。
 あ、あれは……【滅】の構えだ!
 もしかして千景くん、わたしを消そうとしてる!?