――こっちを見ろ
 ――俺だって……こんな事は、二度とごめんだしな
 ――知り合いがやられるのを、黙って見てるわけないだろ

 優しい王子様のようで、最恐の魔王だった千景くん。
 妖怪に呪いをかけられた千景くん。
 なぜかネコ化してしまう千景くん――

 今日一日で、千景くんについて色々と知れたような……謎が深まったばかりのような。

「はぁ~……嬉しいな。
 妖怪が視える人に、初めて出会えたッ」

 思わず、腕の中にいるキキを、キュウッと抱きしめる。
 するとキキは、懐かしい人肌を思い出したのか――
 ポロリと、涙をしずかに落とした。