タヌキくんが、二本足でユラリと立ち上がる。
 その時、千景くんが「確認するけど」とわたしに尋ねた。

「人間の友達がいないから、せめて妖怪の友達を作る――
 そう思って、タヌキを助けようとしてるわけじゃ、
「断じて違います」
……そうか、なら安心だ」

 人間の友達がいないから、妖怪の友達を作るって……。
 そんなこと、あるわけないじゃん!

「わたしは、ただ……話を聞いてあげたいの」

 タヌキくんは、さっき泣いてた。
 たった一人ぼっちで、悲しい思い出を背負ってた。
 それを知ったからには、助けてあげたい。
 見て見ぬふりは出来ない――

「わたしは……祓うんじゃなくて、元に戻してあげたいの。
 わたしたち人間のせいで妖怪になったなら、わたしたちの手で、
 タヌキくんを元に戻してあげたい」
「……チッ」

 え、舌打ち!?
 今のって「分かった」って、意気投合する流れじゃないの!?

「ち、千景くんを振り回してるのは分かってるよ?
 それは本当に、ごめんなさい。
 でも……」

 今まで私は、妖怪が視える人に出会った事がなかった。
 でも今は――千景くんがいる。
 わたしと同じ景色を、千景くんも見てる。

 せっかく「視える仲間」が出来たんだもん。
 ここでケンカはしたくない!