『ぼくは昔、この学校の子供たちに拾われたんだ』
「まちがって、山から下りてきちゃったの?」

『うん。ママとはぐれた。
 道に迷ってウロウロしていたら、学校に入っちゃったんだ。そして、子供たちに見つかった』
「……いじめられたの?」

 おそるおそる聞くと、タヌキくんは首をふった。

『ううん。とってもかわいがってくれたよ。
 ご飯も水も用意してくれて、休み時間になったら、遊びに来てくれた。
 でも……』

 すると。タヌキくんの金色の目が、にごってくる。
 キレイな金色は、影を薄めた。

『でも、子供たちは知らなかったんだ。ぼくがタヌキだってことを。
 タヌキの赤ちゃんは、よく子犬と間違われるから……』
「そっか。みんなはタヌキくんを、子犬だと思ったんだね」

 タヌキくんは、コクンと頷く。

『ぼくがタヌキだと分かった時から……ぼくは、いらない子になった。
 子供たちはご飯も水も、くれなくなった。
 それに……ぼくを、この学校から追い出したんだ』

 ――タヌキめ、あっちへ行け!
 ――きったねーな、タヌキ!
 ――よくも俺らをダマしたな!

『勝手にかんちがいしたのは、子供たちなのに。
 ニンゲンの方なのに……!』