胸のときめきが、一気に動悸へと変わる。
 まさか、応援の「お」の字もないとは……!
 クラスメイトがピンチだってのに、ハクジョー者!

「ちょっとは手伝ってくれても、」
「自分でまいた種だろ。自分でオトシマエをつけろってこった」

 そして、すたこらっさっさ、と。
 千景くんは、本当に行ってしまった。

 ……いいもん。
 こうなったら、わたし一人でなんとかするもん!

「いつも、一人なんだし。今さら慣れっこだよ……」

 くちびるをキュッと噛み、茶色のモヤを見た。
 だけど――
 さっきまでモヤだった妖怪は、今や、少しづつ形ができてる。
 あれは……動物?

「短い耳に、尖った鼻。まるっこいフォルム……。
 そうか、タヌキだ!」

 すると茶色の妖怪は眩しく光り、モヤが晴れる。
 姿を見せたのは、やっぱりタヌキだった。
 だけど、目は赤いまま。
 普通のタヌキじゃないと、一目みただけでわかる。

『ニンゲン……、ゆるさない』
「それ……さっきも言ってたよね。
 ねぇ、聞いてもイイかな。
 あなたは、どうして妖怪になっちゃったの?」