「わたしは、やっぱり話を聞いてあげたい。
 妖怪が、どうして人間に怒ってるか話を聞く。
 祓う祓わないは、その後に考えるってことで……どう?」
「……」

 すると千景くんは、構えていた手をスッと降ろした。
 そして「あほらし」と。
 一言だけ呟いて、この場から立ち去ろうとする。

 ん?
 ”立ち去ろうとする”!?

 ガシッ

「おわ! ビックリした。なんだよ、離せよ」
「絶対にイヤ! どうして帰ろうとするの!?」

 去ろうとする千景くんの腕を、ガッチリ捕える。
 こんな状況で、わたしを一人にしないでよ!

「そもそも、千景くんが妖怪に会いたいって言ったんじゃん!」
「うるせーな。お目当ての妖怪じゃなかったんだよ。
 それに――
 お前にはお前のやり方があるんだろ? じゃあ、やってみろよ」
「千景くんっ」

 なんだかんだ、心の底では応援してくれるの?
 あの千景くんに、少しだけ胸がときめいたよ!
 だけど――

「俺は巻き込まれたくないから退散するけどな」
「それはアンマリだよ、千景くん!」