「待ってよ!!」

 グイッ

 わたしは間一髪で、千景くんの腕をつかまえる。
 そして【滅】と構えた千景くんの手を、わたしの両手で覆った。

「な……ジャマだ、どけ!」
「いや、どかない!」
「どかないと、俺もお前も、あの妖怪に――!」

 その時。
 千景くんが何かに気付き、私の頭を、思い切り下に押した。
 それと同時に、すぐ近くで、

 ガガッ

 と、建物が崩れるような音が響く。

 な、何の音!?
 まるで工事現場みたいな音がしたよ!?

「ふー。間一髪だったな」
「いったい何が、」
「アレを見ろ」

 千景くんは、ある方向を指さす。
 そこは、校舎の壁。
 だけど校舎の壁に……恐竜が爪でひっかいたの?ってくらい、大きな傷が何本も入っていた。

「なに、これ……?」
「茶色い妖怪の攻撃」
「ひ……っ!?」

 どうやら、さっき建物が崩れるような音は、これが原因らしかった。
 こんなのが体に当たったら、一発で死んじゃうって……!

「千景くん、助けてくれてありがとう……!」

 お礼を言うわたしに、千景くんは「なぁ」と不満げな声だ。

「お前は、アレをどうしたいわけ?
 なんでさっき、俺を止めた?」