「どうせわたしには触られたくないよね、そうだよね」
「ひねくれるな、うぜぇ。
 それに、逃げようとすんな。
 わざわざ向こうから来てくれるんだ。会わねーと損だろ」
「うぜぇ!? 会わないと損!?」

 問題発言ばかりで、思わず頭を抱える。
 く……。何を言ってるんだ、この魔王は……!
 すると千景くんは、わたしの頭をコツンと叩いた。

「さっきの約束、さっそく忘れてんじゃねーよ」
「約束……あ!」

 ――妖怪と接触して話を聞くしかねぇ
 ――ちょうど助っ人を頼みたかったんだ

 そういえば、そうだ。
 七夕ゼリーを死守するために、そんな約束を交わした。
 思い出したわたしを見て、千景くんは二ッと笑う。

「だから、向こうから来てくれるのはコーツゴーってわけ。
 呪いを解く方法を知ってる妖怪かもしれねーだろ」

 まったく怖いモノがなさそうな千景くん。
 その肝っ玉が、羨ましい……。
 怖がりのわたしからすると、わざわざ妖怪に会うなんて、信じられない!

 逃げ出そうとする足を、わたしは何とか、地面に押さえつける。
 すべては、七夕ゼリーのため……!