「ほうほう、ネコですか……」

 真っ黒のネコを前に、腕を組んで考える。
 学校に迷い込んだのかな?
 それとも、誰かが家から連れてきちゃったとか!?

「でも首輪がないなぁ。あ、そういえば――」

 確か、ネコってノドをマッサージすると気持ちいいんだっけ?
 よし!

「ほーらほら、マッサージだよ~。
 お、ゴロゴロっていい始めた」

 ネコは、わたしの手にされたい放題。
 無防備に体をねじったり、お腹を見せたりしてる。
 か、かわいい……!

「いま探してる千景くんも、これくらい可愛さがあったら、怖くないのになぁ」

 話し掛けると、ネコはとたんに、目を光らせた。
 ……ん?
 この目の鋭さ、どこかで見覚えがある!

 すると、まるで答え合わせをするように。ネコが口を開けた。

「悪かったな、可愛げなくて」
「……え?」

 ネコなのに、日本語をしゃべってる。
 それに、どこかで聞いたことがある声……
 え、もしかして!?

「まさか、このネコ……千景くん!?」

 ネコを指さす手が、ガクガク震える。
 だって、だってだって!
 あの魔王サマ千景くんが、かわいいネコになって、しゃべってるんだよ!?
 なんで、どういうこと!?

 わたしのパニックがピークに達した時、

 ボフンッ

 白い煙と共にネコは消え、再び千景くんが姿を現した。