「さっきからうるさい。授業中だぞ」
「え、あ……」

 千景くんは人差し指をピンと伸ばし、自分の口にあてた。
 カッコイイ千景くんがすると、なぜか王子様みたいにキマるから不思議――
 なんて思っていたのが、運の尽き。

 ボーッとしたわたしは小石につまずき、地面に近づく。
 え、まさか……わたし、こけたの!?

「わ、わわわあ!?」

 パシッ

 何かにつかまろうと手を伸ばしたら、千景くんの腕に当たる。
 わたしは遠慮なく、千景くんの体に抱き着いた。
 すると――

「げ……!?」

 千景くんの顔が、みるみるうちに青くなる。

「ふぅ。なんとか、こけずにすんだ。
 千景くん、ありがとう!――って。
 千景くんこそ大丈夫? 顔が赤いよ?」
「う、うるせぇよ! きやすく俺にさわんな!」
「ひどい!」

 仮にもクラスメイトなのに!
 だけど悲しむわたしを横に、千景くんはビクッと体を震わせる。
 そして――

「あ、やっべ……!」

 それだけ言い残し、千景くんは、近くの草むらに隠れてしまった。
 ん? どうして草むらに隠れるの?

「千景くん……大丈夫?」

 心配になって、急いでかけ寄る。
 だけど、そこにいたのは魔王でも王子でもなく――

「にゃーん」
「……ネコ?」

 超絶かわいいネコがいましたとさ。