「すみませんが、この話はなかったことに、」
「へー、次のデザートは、七夕ゼリーか。あれウマいんだよな。
 しかも小羽の分が貰えるから、俺は二つ食えるのか」
「!?」

 ちょ、七夕ゼリーだって!?
 ちょっぴり固めの、あのお星さまが好きなの!
 だから……とられるのを、黙って見てるわけにはいかない!

「こ、今回だけの協力って、約束してください……!」
「おー、今回だけだよ。
 俺だって……こんな事は二度とごめんだしな」

 その時、魔王が落ち込んでいるように見えた。
 オニよりも怖い、最恐の千景くん。
 そんな彼の顔に、めずらしく影が落ちる。

「魔王……、じゃなくて。千景くん。
 どういう呪いをかけられたか、聞いてもいい?」
「……さっき、俺を変な呼び方しなかったか?」

 ブンブンと勢いよく、頭を左右に振る。
 すると千景くんは、ジト目でわたしを見てきた。

 だけど……「呪いねぇ」と。
 テンションが下がったような声を出す。

「呪いについては、また今度はなしてやるよ」
「え! でも、」
「――小羽」

 大きな声を出すわたしに、千景くんは「静かにしろ」のポーズ。