『お前は、私の恩人だ。
その恩人を助けられたのなら、私も嬉しいよ』
「九尾……ありがとう。あなたは命の恩人だよ。
あなたも、そしてわたしも――
お互い、無事でよかった!」
ニコリと笑うと、九尾は大きな顔を、私の頬にすり寄せる。
暖かい――思わず、ギュッとしてしまった。
「また、どこかで会おうね。九尾」
『約束しよう、いつか必ずな――』
そう言って、九尾は空高くジャンプする。
そして、そのまま降りてくることなく、姿を消した。
「行っちゃった……」
会って行動を共にする妖怪もいれば、すぐ離れていく妖怪もいる。
九尾と過した時間は短い。
だけど、わたしにとって、かけがえのない時間になった。
「また会おうね、九尾!」
すると、わたしの腕の中に、猫又のニャーちゃんが乗った。
ちょっと寂しがるわたしの腕の中で、ニャーちゃんは、どこか安心したように見える。
もしかして……さっき頭を踏まれたから、九尾が怖い、とか?
「大丈夫だよ、ニャーちゃん、安心して。九尾は怖くないよ。
本当に怖いのは……」
ニャーちゃん、教えてあげよう。
世の中には、妖怪よりも怖い人間がいる事を……!