『昨日、瀕死の私に、お前はアレを買って与えてくれた。
アレのおかげで、私はこうして生きているのだ』
「昨日……、バナナ……、あ!!」
それらのキーワードに、覚えがあった。
昨日、雨の中――かわいい子猫がいた事を。
「あなた、子猫じゃなかったの!?」
『子狸が子犬と間違われるように、私ら狐も、よく子猫に間違われるんだ』
「そ、そんなことって……!」
ビックリだよ!
どこからどう見ても、可愛い子猫だったもん!
いや、でも確かに耳は大きかったような……。
って、フツーは気づかないって!
すると、遠くにいるキキが「子猫にしては不気味だと思いました!」と叫ぶ。
そうか。子猫を見た時キキが固まっていたのは、九尾から漏れる妖気をキャッチしていたからなんだ。
『お腹が空いていたので、小さなサイズにしか化ける事が出来なかったんだ。驚かせてしまって、すまないね』
「ううん。雨の中、あなたを見つけることが出来て良かった」
『今日はね、あの時に借りた布と板を返しに来たんだ』
「布と板……」
九尾に渡されたのは、ハンカチと下敷き。
なるほど、確かに……布と板だ!