「み、視えて、」
「ウソついたら、今度の給食のデザート、お前の分をもらう」
「すみません、視えてます」

 くそ~!
 まさか給食のデザートを、人質にとられるなんて思わなかった!
 なんというアクドイことを……!

 ギギギと、奥歯をかみしめるわたし。
 そんなわたしを見て、魔王は「良かった」と、安心したように息をはいた。

「良かった? なんで?」
「今日、登校中にスゴイ妖気を感じた。
 どこから妖気が出てるのか知りたくて、試しに念を送ってみた。
 すると、お前が反応した」

「あ! あれって、もしかして……」

 ――おい、こっちを見ろ

「あれは、俺の念だ。
 念を送った瞬間に、お前が挙動不審になって、ダッシュで逃げた――つまり、お前には、俺の声が聞こえたってことだ。
 どでかい妖力を感じたから、どんな妖怪がいるかと思ったが……。
 まさか人間だったなんて。ラッキーだ」
「え、ラッキー?」

 っていうか、さっきキョドーフシンとかなんとか。失礼なこと言わなかった?

 けれど、魔王に文句を言うわけにはいかない。
 魔王が次にする話を、しずかに待つ。