『俺は昔から、人に見えない存在だ。
 それを寂しく思った事はなかった。
 でも久しぶりに……そこの人間と、目が合った』

 そこの人間――と言った時、猫又は千景くんを見た。
 もちろん千景くんは、猫又を睨み返す。
  だけど――

『目が合ったとたんに嫌な顔をし、視線を逸らされた。
 その時……どうしようもなく寂しくて、つらかった』
「え……」

『俺は、ずっと一人だった。
 だから一人きりには慣れてる……はずだったのに。
 その人間に会った日から、どうしようもなく、仲間が欲しいと思ってしまった』
「猫又……」

 という事は、千景くんをネコ化した理由って――

『小僧、ネコにしてすまなかった。
 俺はどうしても、お前と仲間になりたかったんだ。
 それだけのために、小僧に呪いをかけてしまった』
「な!?」

 衝撃的な理由に、千景くんは怒りを押さえきれないみたいだった。
 でも……ムリないか。
 だって、まさに昨日。
 ネコになったまま、人間に戻れなかったわけだし。
 千景くんが呪いを憎むのも、当たり前だよ。