「あの猫又は、千景くんを狙ってる。
 だったら、千景くんは近づかない方がイイよ」
「……くそッ」

 顔を下げて、悔しそうにする千景くん。
 そんな彼の手に、わたしはそっと……
 バナナを渡した。

「もしお腹が空いたら、これを食べて待っててね」
「……」

 その後、千景くんは大人しく待ってくれた――なんて、そんなわけはなく。

「こんな時に、ふざけてんじゃねー!」

 わたしの後ろで、魔王が文句を言っていた。
 でも聞こえないフリ。
 わたしは今から、猫又と話をしに行くんだもん!

 ザッ

 九尾と猫又の前に行く。
 どちらも、とんでもない大きさ……。
 でも、負けない!
 わたしには、守りたい人や妖怪がいる。
 だから、もう――こわがらない!

「あのさ猫又……聞いてもいいかな?
 どうして千景くんを狙うの?
 どうして千景くんに呪いをかけたの?」
『……』

 猫又は、初めはだんまりだった。
 だけど、もうネコ化していない千景くんを見て……。
 どこか諦めたように、ため息をつく。