「狐は狐でも、ただの狐じゃねぇ――九尾だ」
「きゅうび……?」
「猫又よりも格上の、大妖怪だ。
 でも、なんでこんな所に……」

 千景くんは、眉をしかめて不思議がる。
 すると今まで抵抗していた猫又が、九尾には勝てないと思ったらしく、急に大人しくなった。
 耳もシッポも、ダラリと地面に垂れ下がっている。
 これは……もう戦う意思がない、って事だよね?

 その時――カーくんが、上空から叫んだ。

「主! 話をするなら今です!
【浄化】することが出来るかもしれません!」
「そ、そっか。分かった、やってみる!」

 今なら、やれる気がする。
 ヨシ――!
 だけど立ち上がるわたしの手を、千景くんがギュッと握る。

「千景くん、どうかした?」
「……俺も一緒に行く。
 お前に何かあったら、アトアジ悪いし」
「千景くん……」

 千景くんは、口は悪いけど、優しい人だ。
 今だって、言い方は悪いけど……本心では、わたしを心配しているのが分かる。
 だけど――

「お願いだから、来ないでね」
「なんでだよ!」