「頭かゆいの? ノミでもいるのかな?」
「今度ノミって言ったら、今度こそ、お前の顔面でツメをとぐからな。
 って、ちがう。そうじゃなくて」

 タシッ

 ネコ千景くんの両手が、わたしの膝に置かれる。
 顔はうつむいたまま。まるで猿芸の「反省」ポーズみたい。

「言い方が悪かった。
 俺を守ろうとしてくれて、ありがとう」
「千景くん……」

「けど! もう、あんな無茶はするな! ジュミョーが縮んだぞ!
 それに、言っただろ。
 お前のことは、俺が守るって」
「っ!」

 ポポポと、一気に顔が赤くなる。
 だって、だって……!
 千景くんが、あまりにも素直だから!
 こんな時に、レアな発言は禁止!

「げ! その顔なんだよ!?
 猫又と戦ってんだぞ!? もっとシャキッとしろ!」
「だ、」

 誰のせいだと思ってるの、誰の!

 恥ずかしいのと照れくさいのとで、うつむくわたし。
 すると、千景くんの「ヤベ」の声。
 ん?「ヤベ」?

「千景くん、どうし……わぁ!?」

 ボワンッ

 ネコ千景くんが、白い煙に包まれる。
 これは――!

「人間に、戻れた……」