ギュッ

 おもわず目をつむる。
 その間も、猫又がわたしに向かって、突進してきた。
 猫又が動く度に、ドシンドシンと揺れる地面。

 立ってるだけで、いっぱいいっぱい……!

「た、助け……っ」

 その時――
 視界のはしっこで、千景くんの姿がチラリと見える。
 千景くんは猫又と比べると、体の大きさが、天と地の差ほどある。
 それなのに、猫又を恐れることなく、わたしの元へ、真っ直ぐ走ってきてくれていた。

「花りん!!」
「千景くん……っ」

 あぁ、千景くんはスゴいや。
 千景くんだって、猫又が怖いはずなのに。
 それでも、わたしを助けようとしてくれるんだ。

 ――知り合いがやられるのを、黙って見てるわけないだろ
 ――たまには心配されんのも、悪くねーな
 ――ありがと、小羽

 いつも怖いけど、本当は優しい千景くん。
 もし千景くんが、猫又に傷つけられたら?
 わたしをかばって、ケガしたら?

「イヤ……」

 ――お前だけでも隠れてろ
 ――花りん!

「そんなの、イヤ!」