『こっちに……、きて』

 う……。
 学校へ登校中の足が、ピタリと止まる。
 わたしは、いま――
 聞きたくない声を、キャッチしてしまった。

『こっちだよ……、こっち』

 まただ。
 また聞こえる。
 人ではない、あの声が!

『早く、こっち……。来て……』
「うぅ……」

 まるで、すぐ耳元で聞こえている感じ。
 ボソボソって、ささやいているような……。

「こういう時は……、聞こえないフリ!」

 ふたをするように、両耳に手をあてる。
 ふっふっふ。
 これなら「声」も聞こえな、

『きて……、来て……早く』

 な、なにー!?
 まさかの、ノーダメージ!?

「やっぱり、逃げるに限るー!!」

 どんな事をしても、声は消えてはくれない。
 わたしは、白旗を上げる代わりに。
「あ~」と耳にふたをして、うなりながら学校へダッシュした。

 あ~、朝から疲れたくないのに……!
 どうして毎回、「こうなる」のー!