桜さんの前では絶対に泣きたくない。僕はぐっとこらえて、涙が流れないようにした。

「中条くん、大丈夫?」

 桜さんはポケットからハンカチを出した。そして僕の涙を拭こうとする。

「涙、出てないから大丈夫だよ」

 桜さんはいつも心配してくれる。

――桜さんは、いつも優しい。

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 桜さんは僕に、甘い味の美味しさを教えてくれた。
 桜さんは僕に、幸せを教えてくれた。

 〝桜さんのことが好き〟

 その気持ちが、あふれてくる。

最近、僕の本能は、桜さんが作る甘いお菓子、そして桜さんを求めている。

 味のしない甘いお菓子はもう、物足りない。
 桜さんが隣にいないと、さみしい。
 
――こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだった。

𓂃 𓈒𓏸◌