ふと、中条くんが初めて私の手作りケーキを食べた時のことを思い出す。

 中条くんは言っていた。

「ケーキって、こんなに美味しかったんだ」って。

 ケーキ食べたことないのかな?って、その時は思っていたけれど……。甘い味を感じるケーキを食べたことがなかったってこと?

 私が作った甘いお菓子を食べて、初めて甘い味を感じたってことは、眠らないために毎日食べていた甘いお菓子も、いつも味がしなかったってことだよね? 

私は小さい時から当たり前に甘い味を感じていた。当たり前に甘いお菓子を美味しく感じていて――。

 どんな気持ちだったんだろう。
 小さい時から甘い味を知らないって。

 中条くんは周りにそれを隠している。

 周りが甘くて美味しいって食べている時も、ひとりだけ味を感じなくて、悲しかったりしたのかな?

 本当に、どんな気持ちだったんだろう――。