でも今は、中条くんを助けないと!

 私は中条くんから少し体をはなす。そして必死に私の制服の胸元から、クッキーの入った小さな袋を出した。

 最近、中条くんをさけていた。

でも中条くんが何かあった時のために、中条くんが私のお菓子を求めてきた時のために……いつも手作りクッキーを持ち歩いていた。

 急いで袋を開けると、中条くんの口の中にクッキーを入れる。

 中条くんは弱々しくクッキーを()(くだ)く。

「飲み込めた?」
「うん……飲み込んだ。美味しい」

 もう一度、ぐいっと体が中条くんに引き寄せられる。

「もう少しだけ、このままでいさせて?」

 中条くんは私のことをさっきよりも強く、ぎゅっと抱きしめてきた。

 さっきの言葉を思い出して、ぎゅっとされていて、ドキドキして……。

 心の奥に閉じ込めようとしていた中条くんへの想い。それがどんどんあふれてきて、割れない風船みたいに大きくふくらんでいく――。

 きっとこれが〝好き〟って気持ちなんだと思う。

――私は、中条くんのことが好き。

 私も中条くんの背中に手をまわして、ぎゅっとした。