意味深な言葉をくれたのは、春休み前。

 いつもの秘密の場所で、中条くんに作ってきたマドレーヌを渡して、春休みの話をしている時だった。

「もうすぐ春休みだね」って、私はしんみりした気持ちでつぶやいた。

 だって、春休み中は中条くんの食べる姿が見れないから。少しさみしい気持ちになってきて……。

「休み中も、桜さんの甘いお菓子が食べたいな……」

 全く予想していなかった言葉。おどろいて、うれしくて……空気いっぱいなボールが跳ねた時みたいに、私の心は跳ねた。

「毎日は難しいけれど……休み中も中条くんにお菓子を作る! もしよければ、うちに来て食べる?」
「中条さんの家……」

 黙り込む中条くん。

――家に来るのは、嫌なのかな?

 中条くんは仲良くなる前はあんまり表情を変えなくて、ほわんとしてて、本当に不思議な雰囲気のイケメンだなって思っていた。だけど私の前では色んな表情をしてくれるし、やりたいこととかやりたくないことの意見も言うタイプの男の子だった。断られるかな?

「家来るの、嫌だった?」

 うん。って言われる覚悟をしていたけれど……。