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 リエート卿と続けざまに四曲ほど踊り、私は休憩のため応接室を訪れた。
グレンジャー公爵家とクライン公爵家の直系だからか、かなりいい部屋で設備も充実している。
侍従も親切で、直ぐにお茶やお菓子を用意してくれた。
『ゆっくりとお寛ぎください』と言い残して退室する彼らを見送り、私はリエート卿に促されるまま腰を下ろす。
すると、彼も向かい側のソファへ腰掛けた。

「はぁ〜!さすがにちょっと疲れたなぁ。ダンス自体は別にどうってことねぇーけど、色んな人にジロジロ見られんのは慣れねぇ」

 『しかも、相手は各国の権力者だし』とボヤき、リエート卿はここぞとばかりに肩の力を抜く。
相当気を張っていたのか、まるで溶けるようにソファへ身を預けた。
すっかりリラックスしている彼を前に、私は居住まいを正す。

「あの、リエート卿。ちょっとお話があるんですが」

「ん?なんだ?」

 天井に向けていた視線をこちらに戻し、リエート卿はコテリと首を傾げた。
疲れていてもちゃんと話を聞こうとしてくれる彼に、私はスッと目を細める。
と同時に、少しばかり表情を引き締めた。