「私は彼女に幸せになってほしい。だから、この想いは仕舞っておく。公になれば、父上や母上は何としてでも彼女を皇太子妃にしようとするだろうから」

 『それは私の望むところじゃない』と言い切り、レーヴェン殿下は少しばかり表情を和らげた。
かと思えば、後ろを振り返り、切なげに夜空を見つめる。

「彼女だけは自由に生きてほしい……私にはそんなこと許されないから」

 一種の羨望とも言える感情を露わにし、レーヴェン殿下はアメジストの瞳をスッと細めた。
恐らく、彼は自分の願いを……決して叶えられない夢をアカリに託したのだろう。
同じギフト複数持ちで、権力者の子供という共通点を介して。
ある意味、独りよがりな考えだが……何となく、気持ちは分かる。
僕も次期公爵で……帝国の未来を担っていく立場の一人だから。
レーヴェン殿下ほどのプレッシャーも責任もないが、『アカリだけは自由に』という思いは同じだった。

「ヤバい……泣ける!」